AI Agentとは何か:LLMとの違いと業務で使える理由

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AI Agentの基本構造を説明する図

生成AIの話題で、最近よく出てくる言葉に「Agent」があります。

大規模言語モデル、つまりLLMだけでも、文章の作成、要約、翻訳、質問回答など、多くの仕事を助けることができます。しかし、企業の業務で本当に欲しいのは、単に「答えを返すAI」だけではありません。

資料を探す。条件を確認する。社内システムを開く。メールを下書きする。必要なら担当者に確認を回す。こうした一連の作業まで支援できるAIが求められています。

この方向にある考え方が、AI Agentです。

Agentとは何か

Agentを一言で言えば、目的に向かって、情報を見て、判断し、必要な操作を実行するAIの仕組みです。

LLMが「文章を理解し、文章を生成する頭脳」だとすれば、Agentはその頭脳に、道具、記憶、手順、実行権限を持たせたものです。

たとえば、利用者が「先月の問い合わせ傾向をまとめて、営業会議向けに要点を出してほしい」と依頼したとします。普通のLLMは、入力された文章だけをもとに回答します。一方、Agentは、問い合わせデータを探し、分類し、必要な集計を行い、要点をまとめ、場合によっては資料の下書きまで作ります。

もちろん、すべてを完全に自動で任せる必要はありません。企業で使う場合は、人間の確認を途中に入れる設計が現実的です。

AgentとLLMの違い

LLMとAgentの違いは、「考えるだけか、行動まで含むか」です。

LLMは、入力された文章に対して、次に来るべき文章を予測しながら回答を作ります。質問に答える、文章を書く、要約する、分類する、といった処理が得意です。

Agentは、LLMを中心にしながら、外部ツールや社内システムを使います。検索する、データベースを参照する、APIを呼び出す、メールやチケットを作る、複数ステップの作業を進める、といったことが視野に入ります。

つまり、LLMは「会話できるAI」、Agentは「仕事の流れに入り込めるAI」と考えると分かりやすいです。

Agentの強み

Agentの強みは、業務を点ではなく、流れとして扱えることです。

多くの会社の仕事は、単発の質問回答だけでは終わりません。問い合わせを受ける、顧客情報を確認する、過去履歴を見る、ルールに照らす、回答案を作る、必要なら人に回す。こうした作業がつながっています。

Agentは、このつながりをAIに扱わせるための考え方です。

もう一つの強みは、業務知識とツールを組み合わせられることです。社内FAQ、規程、製品マニュアル、顧客管理システム、予約システム、請求システムなどを、必要な範囲で接続できます。

そのため、うまく設計すれば、人が毎回同じ画面を開き、同じ確認を行い、同じような文面を作る作業を減らせます。

いま流行しているAgent

現在のAgentは、大きくいくつかの方向に分かれています。

一つ目は、業務アプリに組み込まれるAgentです。Microsoft Copilot Studioのように、社内業務フローやMicrosoft 365と連携して使うものがあります。

二つ目は、CRMやカスタマーサポート領域のAgentです。Salesforce Agentforceのように、営業、サービス、マーケティング、コマースのデータと接続し、顧客対応や社内作業を支援するものです。

三つ目は、開発者向けAgentです。コードを書く、テストを直す、エラーを調べる、仕様から実装案を作る、といった作業を支援します。

四つ目は、ノーコード・ローコード型のAgentです。Dify、n8n、LangGraphのように、LLM、検索、API、条件分岐、外部ツールをつなぎ、特定業務向けの小さなAgentを作る方向です。

重要なのは、どれが一番流行っているかではありません。自社の業務に対して、どのタイプが一番小さく、安全に試せるかです。

Agentは何ができるのか

Agentが向いているのは、手順がある程度決まっていて、情報確認が多く、繰り返し発生する仕事です。

たとえば、問い合わせ対応では、顧客の質問を分類し、関連FAQやマニュアルを探し、回答案を作り、難しいものだけ人に渡すことができます。

営業では、問い合わせフォームの内容を読み、会社情報を補足し、過去の類似案件を探し、営業担当者向けに要点をまとめることができます。

人事では、社内規程をもとに休暇、経費、福利厚生に関する質問へ一次回答を行い、例外的なケースだけ担当者に回すことができます。

経理では、請求書や領収書の内容を読み取り、入力漏れを確認し、承認フローに必要な情報を整理することができます。

製造業や保守業務では、過去のトラブル記録やマニュアルを参照し、原因候補や確認手順を提示することもできます。

大企業での活用例:KlarnaのAIアシスタント

分かりやすい公開事例として、決済サービス企業KlarnaのAIアシスタントがあります。

Klarnaは、OpenAIを活用したAIアシスタントについて、導入初月で230万件の会話を処理し、カスタマーサービスチャットの3分の2を担当したと発表しました。また、同社はそれが700人のフルタイム担当者に相当する仕事を行い、再問い合わせを25%減らし、解決時間を従来の11分から2分未満に短縮したと説明しています。

この事例で重要なのは、「AIが人間を完全に不要にした」と単純に読むことではありません。むしろ、よくある問い合わせ、手順が決まっている問い合わせ、複数言語での一次対応をAIに寄せることで、人間がより複雑で判断の必要な対応に集中できる可能性を示した点です。

企業にとってAgentの価値は、派手な自動化そのものではありません。繰り返し発生する業務の中で、人が毎回同じ確認に使っている時間を減らせることです。

Agent導入で注意すべきこと

Agentは便利ですが、導入には注意が必要です。

第一に、実行権限を広げすぎないことです。AIがメールを送る、データを書き換える、注文を確定する、といった操作を行う場合、必ず権限管理と承認フローが必要です。

第二に、最初から大きな業務を任せないことです。まずはFAQ回答、資料検索、下書き作成、分類、要約など、失敗しても修正しやすい範囲から始めるべきです。

第三に、人間の確認を前提に設計することです。特に顧客対応、契約、金額、個人情報を扱う業務では、AIの出力をそのまま最終判断にしないほうが安全です。

まとめ

Agentは、LLMを業務の中で使える形に近づけるための重要な考え方です。

LLMが文章を理解し、文章を作る力を持つとすれば、Agentはその力を使って、情報を探し、道具を使い、業務の流れを進める仕組みです。

ただし、Agentは万能ではありません。良いAgentを作るには、対象業務を絞り、使えるデータを整理し、実行権限を管理し、人間の確認点を設計する必要があります。

企業が最初に考えるべきことは、「AIに何でもやらせること」ではありません。「どの繰り返し業務を、どこまでAIに任せると、現場の時間がどれだけ戻ってくるか」です。

Agentは、AIを単なるチャット相手から、業務を支える実行型の仕組みに変えていく一歩です。

参考公開資料

Microsoft Copilot Studio、Salesforce Agentforce、KlarnaおよびOpenAIが公開しているAI Agent関連資料を参照しました。

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